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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)3号 判決

高石市東羽衣三丁目五番八号

控訴人

鳥居良子

右訴訟代理人弁護士

密門光昭

泉大津市二田町二丁目一五-二七

被控訴人

泉大津税務署長

中村貞雄

右指定代理人

高須要子

谷口栄祐

志水哲雄

熊本義城

岡本雅男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五三年一一月九日控訴人に対してなした控訴人の昭和五二年分の所得税についての更正処分及びこれに伴う過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張・証拠関係

次のとおり削除、訂正、付加するほかは、原判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目表一〇行目の「鳥居株式会社」以下同二枚目裏七行目の「供していた」までの部分を次のとおり改める。

「控訴人は、戦前から、本件土地のほか大阪市城東区中浜一丁目六五、六六番の宅地地積合計四五九・五〇平方メートル(以下「中浜一丁目の土地」ともいう。)及び同地上所在の貸家七軒、高石市東羽衣五丁目一〇〇番外九筆の山林外地積合計約二五〇〇平方メートル(以下「東羽衣五丁目の土地」ともいう。)、同市東羽衣三丁目五四番一の宅地地積七四三・八三平方メートル(以下「東羽衣三丁目の土地」ともいう。)及び同地上所在の貸家五軒を所有し、昭和三〇年代までは、これらの不動産を利用して、貸家業のほか農耕、植樹等の業務に従事していた。そして昭和四〇年代に入るや、周辺地の宅地化に伴い、東羽衣五丁目の土地につきこれを宅地化したうえ建売分譲を行うことを、また、東羽衣三丁目の土地及び本件土地につきビルを建設することを計書し、まず、東羽衣五丁目の土地につき、昭和四五年から各種の準備作業を行つたうえ、昭和四六年一一月から船井工務店こと船井君雄(以下「船井工務店」ともいう。)と共同で建売分譲事業を始めた。しかし昭和四七年に至り船井工務店が倒産してしまつたため、これを契機に、対外的折衝や対税上の理由等から、同月、夫である鳥居祐一を代表取締役、自己を取締役とする控訴人夫婦の個人会社である鳥居株式会社を設立し、以後同会社と共同で(土地の運用は控訴人が、地上建物の運用は同会社がそれぞれ分担)、右建売分譲事業を引継ぎ遂行するとともに(なお、同事業は昭和五二年に完了。)、右ビル建設事業計書を実施に移すことになつた。かくて、同会社は、昭和四九年から昭和五〇年にかけて控訴人所有の東羽衣三丁目の土地の上に原判決添付の物件目録(二)記載の建物(以下「一号ビル」という。)を建設したが、控訴人は、右計書に基づいて、本件土地につきビル(以下「二号ビル」という。)建設予定地として宅造整備、排下水溝整備、境界明示等の準備作業を多額の費用を支出して行い、かつ、二号ビル建設着工に至るまでの予定で、本件土地を右建売分譲事業実施の際の建築資材や庭木、庭石等の置場として、あるいは一号ビル建設のための建築資材や旧建物の廃材等の置場として常時使用してきたものである。

しかして、もし控訴人が本件土地を所有していなかつたとすれば、控訴人は本件土地に匹敵する土地を賃借する等しなければ右一号ビル建設事業を円滑に遂行することができなかつたことが明らかであつて、かかる意味において、本件土地は、正に被控訴人引用の後記国税庁長官通達三七-二一(2)の「空閑地で・・・・特別の施設は設けられていないが、物品置場等として常時使用している土地で事業の遂行上通常必要なものとして合理的であると認められる程度のもの」に該当するものと解すべきである。」

二  同二枚目裏一三行目の「賃料」の次に次のとおり加える。

「(なお、控訴人は、従前から所有していた前記貸家の家賃が地代家賃統制令の適用を受けていた経緯等から、本件土地の地代としては、地代家賃統制令に基づき昭和五〇年度の固定資産評価額を基礎として算定した金額(これを具体的に算定すれば、月額金一万七、二五五円となる。)に則するか、あるいはそれ以上のものであれば充分相当性があると固く信じていたものであつて、右月額二万円の地代は充分相当性がある。)」

三  同四枚目裏二行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「ところで、国税庁長官通達(昭和四六年八月二六日付直資四-五外)三七-二一(法三七条関係における買換資産を当該個人の事業の用に供したことの意義について規定し、譲渡資産が事業の用に供していた資産であるか否かの判定に準用されるもの)(2)(以下「本件通達三七-二一(2)」という。)は「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地、空屋である建物等は、事業の用に供したものに該当しない。ただし、特別の施設は設けていないが、物品置場、駐車場等として常時使用している土地で事業の遂行上通常必要なものとして合理的であると認められる程度のものは、この限りでない。」と規定している。本件においては右但書の適用の有無が問題となるところ、前記のような本件土地の譲渡時の状況に鑑みれば、本件土地が、「物品置場として常時使用している土地」であるとか、「事業の遂行上通常必要なものとして合理的であると認められる程度のもの」であるとは到底解することはできない。」

四  同六枚目表四行目の「号証」の次に「第四〇号証の一、二、第四一号証の一ないし四、第四二号証、第四三ないし第四五号証の各一ないし三、第四六、第四七号証、第四八号証の一ないし三、第四九号証の一、二、検甲第一号証(昭和五七年四月五日鳥居祐一撮影の本件土地の水路整備並びにU字溝設置状況の写真)。」を加える。

同裏五行目の「第三七号証」の次に「第四〇号証の一、二、第四一号証の一ないし四、第四三号証の一ないし三、第四五号証の二、三」を加える。

同六行目の「認める」の次に「第四六号証の原本の存在及び成立を認める。」を加える。

同八行目の「知らない」の次に「検甲第一号証が控訴人主張の写真であることは知らない。」を加える。

理由

一  当裁判所も、原判決と同様に、控訴人の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、以下のとおり訂正、附加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決七枚目表三行目の、「第一二号証」の次に「第一三号証、第一四号証の一」を、「乙第一号証」の次に「第七ないし第一一号証」をそれぞれ加える。

同表五行目の「第九号証の一、二」の次に「第一四号証の二、第一五号証の一ないし七」を、「第一六号証」の次に「第一七号証の一ないし九、第二〇号証の一ないし一〇」をそれぞれ加える。

同六行目の「第二四号証の一ないし三」の次に「第三九号証」を加える。

同九行目から一〇行目にかけての「大阪市内や高石市内の宅地、田畑、山林」を「中浜一丁目の土地、東羽衣五丁目の土地、同三丁目の土地」と改める。

同一〇行目の「右宅地上に建物」を「中浜一丁目の土地上に賃貸用建物三棟、東羽衣三丁目の土地上に同建物二棟」と改める。

2  同裏三行目の「宅地化する目的で」の次に「控訴人により」を加える。

同六行目の「高石市東羽衣五丁目一〇〇番の土地」を「東羽衣五丁目の土地のうち」と改める。

3  同八枚目表三行目の「その際」の次に「控訴人の許諾のもとに」を加える。

同五行目の「鳥居株式会社は」の次に「昭和四八年四月」を加え、同六行目の「の建設」を「をそれぞれ建設すること」と改める。

同七行目の「昭和四九年一二月」の次に「控訴人から東羽衣三丁目の土地を賃借したうえ」を加える。

同九行目の「二号ビル」の次に「については、後日賃貸借契約を締結する予定のもとに、昭和四九年控訴人から本件土地の引渡を受け、本件土地につき自らの費用負担において国有水路の整備工事等の準備作業を行つたものの、そ」を加える。

4  同裏一一行目の「右認定に反する」の次に「成立に争いのない乙第二、第三号証の各一、二、第九、第一〇号証」を加える。

同一三行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「なお、控訴人は、昭和四五年から昭和五三年までは船井工務店ないし鳥居株式会社と共同で東羽衣五丁目の土地につき建売分譲事業を行い土地分譲業を営んでいた旨、及び鳥居株式会社と共同で一号ビル及び二号ビルの建設事業計画を実施に移し、一号ビルについてはこれを完了し、二号ビルについては本件土地につきその主張の準備作業をした旨主張する。しかし右建売分譲事業や右ビル建設事業そのものは船井工務店ないし鳥居株式会社の単独事業であつて、控訴人はその所有地をこれらの事業者に右各事業用地として売渡しないしは使用させたにすぎないものであることは、右に認定したとおりである。」

5  同九枚目表五行目の「しかし、」の次に「控訴人主張の本件通達三七-二一(2)の趣旨等に照らしてみても」を加える。

同裏八行目の「ままであること」の次に「(このことは右甲第二〇号証の一ないし一〇により認める。)」を加える。

6  同一〇枚目表三行目の「認められるところ」の次に「右各証拠が採用できず、右〈2〉の主張事実が認められないことは前示のとおりであるが」を加える。

同六行目の「一億一、七五〇万円」の次に「成立に争いのない」を加える。

7  同裏五行目の後に、「(控訴人が、当審で主張するように、月額二万円が本件土地使用の対価として相当であると信じたとしても、これは右の結論を左右するものではない。)」を加える。

二  よつて、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 河田貢 裁判官 松尾政行)

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